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■「2003年のボジョレー・ヌーボ」  By ソムリエ川中


皆さん、今年のボジョレー、もうお試しになりましたか??  フランスでは今年の夏は120年ぶりの猛暑と言われ、ワインは大変美味しいとの前評判でしたが、例年になく、甘味が強く、酸味は少なかったことにお気付きになりましたでしょうか。  そうです。2003年は決して最高の年ではなかったのです(!)。  この夏私は、ボジョレーの収穫を体験すべく、ジュリエナス村のミッシェル・テート氏のドメーヌ(ワイナリー)へ行って参りました。  9月8日、ディジョンの町へ着いた私は、ブルゴーニュの名醸地を見学しようとA6号線を南へ南へ…。ジュヴレ・シャンベルタン村、クロ・ド・ヴジョー、ヴォーヌ・ロマネ村、ニュイ・サン・ジョルジュ、ボーヌ、ピュリーニ・モンラッシェと畑を見ながら、車で旅をしました。  ところが!?なんとブルゴーニュの畑には葡萄が無いのです。  ロマネ・コンティにも、モンラッシェにも・・・どこに行っても、9月のはじめにして既に収穫は終わってしまっていたのです。  今年は夏、とても暑かった為、例年よりも約1ヶ月も早く葡萄が熟してしまい、カビの発生を恐れた栽培農家は、早々と収穫せざるを得ない状況になったのです。訪問したボジョレーのミッシェル・テート氏のワイナリーでも「今年は、ボジョレー地方では8月15日から収穫を始め、半月で終わらせてしまいました。夜中も30℃を越える日が続いたので、酸味がほとんどのらない、まったりとしたものになってしまいました」とのこと。  最高のワインのためには、暑い日中と、とても涼しい夜が必要なのです。暑い昼が葡萄に甘みを与え、冷えた夜との気温差で、すがすがしい酸味を得るのです。ワインはこのバランスでもって良・不良を語られるのですから、今年は不良の年(!!)と言わなければならないでしょう。  さらに日中も気温が高すぎて、西日の当たる畑では葡萄の実が炭化してしまい収穫できず、量的にも例年の60%程度になったそうです。

テート氏は「私たちのワイナリーでは、収穫を可能な限り遅らせて8/25~8/30に行いましたが、これが限界でした。茎はまだ熟成しておらず、青っぽいかおりを芳っていますし…。収穫には人手が必要です。ですが、今年は早すぎて季節労働者がどこの造り手でも確保できず、やむなく中学生や高校生をアルバイトに雇っての収穫作業でした。収穫の後も、あまりに糖度が高いので高アルコール度数になってしまい、発酵が止まってしまうものも発生しています。本当に 100年に一度の大変な年です。私の家の資料では、1893年の夏以来の出来事のようですよ」と苦笑。  現地にて日本の皆さんより2ヶ月少々早く、出来たばかりのボジョレー・ヌーボを試飲させて頂きましたが、甘~いネクターのような味でした。  「これから1ヶ月半でどこまで良質のワインに仕上げるかが腕の見せどころ。がんばるよ。でもワインは農産物。人が手を加えて出来ることはせいぜい 20%。今年は思い出深い年になること間違いなしです。お楽しみに」とテート氏。


2ヶ月後、私共のお店にテート氏のヌーボが入り、再び味わってみました。   甘みはやはり2ヶ月前と同様にあるけれど、悔しそうにしながらも思い切って不良の葡萄を廃棄し、良質の果実を厳選されたせいか、他社のヌーボと比べると、より色濃く、酸味もそこそこに感じられる上質の仕上がりです。  きっと今頃、ジュリエナス村のテート氏は、もう来年の為の準備に入っていることでしょう。ボジョレーからの便りには「今はあの暑かった夏の日を思い出せないほど、冷たい風が毎日吹いています。黄金色に染まっていた葡萄の葉っぱもすっかり落ちて、音のない静かな冬につつまれています」とありました。  毎年繰り返されていることとはいえ、自然に委ねて生きるワイナリーの厳しさとたくましさを、ひしひしと感じる今年のボジョレー・ヌーボでした。

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