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■「シャンパーニュ地方を訪ねる」  By ソムリエ川中


大きな造り手と小さな造り手 モエ・エ・シャンドンとルネ・ジョフロワを訪ねて   Moet&Chandon(モエ・エ・シャンドン)社は、ワイン好きなら誰でも知っている巨大シャンパンメーカー。世界中で愛飲され、なんと4 秒に1本のペースで開栓されています。  一方、Rene Geoffroy(ルネ・ジョフロワ)社は、親子二人で全てを運営している、小さなこだわりシャンパン醸造家です。今年の初秋、私はこの相対する2社を訪問してきましたので、レポート致します。  モエ・エ・シャンドンのモエ社は、エペルネ市の中心に君臨する会社です。社屋の隣には、エペルネ市の市役所、その建物もすべてモエ社の所有であるといえば、いかに巨大な会社であるかイメージいただけるかと思います。更にその隣には、かつてナポレオン1世をもてなしたこともある迎賓館で、現在はモエ社の接待用シャトー、"トリエアノン" が広がっています。

午前11時頃、モエ社に到着し、その壮観さに圧倒されながらビジタールームに入ると、有名ブランド&パンプスの制服に身を包んだ日本人の女性ガイドさん(!)が出て来られました。案内されるままに、まずは地下のカーブへ・・・。  総距離にして20キロを越えるというこの地下カーブ。そこは、まるで地下要塞のごとく、シャンパン、シャンパン、そしてシャンパンで埋め尽くされています。なんとも圧巻!要所、要所を見学しただけであっという間に1時間が過ぎていました。  その後は、 "トリエアノン" (注)ゲスト専用ダイニングにて、すばらしいコース料理の昼食でもてなしてくださいました。  モエ社のマネージャーが語ります。 「いつでも、どのようなシーンでも、決まった味わいを必ず提供することが、モエ社のコンセプトです。今年は悪い年だったとか、以前飲んだものよりよい味わいだったなどということは絶対許されません。一定したクオリティーを、世界中にお届けすることなのです。安定した商品を造るためには、巨大な量の葡萄を確保し、何年ものワインをストックしなければならないのです。すると、自ずから巨大なカーブ、大きな資本が必要となるのです。」  一応納得はするものの、そのスケールには改めて、感嘆のため息がでます。  一方、エペルネ市から車で20分。セーヌ川支流のマルヌ川のほとりにある静かな通り、キュミエール村にシャンパンハウス、ルネ・ジョフロワがあります。


 出て来られたのは、息子さんのジャン・バティスト・ジョフロワさん。ジーンズ姿の彼は「じゃあ、おばあちゃんの家に行きましょうか」と、向かいの祖母宅へ向かい、地下のカーブへ案内してくれました。  細い階段を下りると、こじんまりしたカーブに所狭しとシャンパンが並んでいます。しかし、小さいとはいえ、数にしたら3万本のワインが熟成中だそうです。葡萄を搾る小型の圧搾機、タンク、研究室・・・こじんまりとまとまった一連の設備を20分ほどで見学し、作業所の一角での試飲タイムに入りました。  古い樽をテーブル代わりに、ジャンさん自信作の6アイテムを開栓。それぞれの味や特長を語ってくれます。 「私のシャンパンは、モエ社とは比べようもないものです。出来る限り一定の味わいを造り上げてはいますが、私はむしろこの村の個性を表現することが大切と考えていて、よい葡萄が収穫できない年が続けば、生産量をを減らしてクオリティーを確保するんです。--(中略)--自分が責任を持って、お届けできる量はこれだけ。これ以上を望めばどうしても行き届かない・・とね。さもなきゃ、私たちのような小さな作り手の存在意義がないんです。」  小さな造り手は、畑の管理からラベル貼りまで全てを自らが行って、生産地や生産者の見える商品を消費者に届けようとしているんだなぁと、改めて思いました。ユーモアを交え、笑顔で語る表情の中に、彼の熱い情熱を感じた次第です。  ジョフロワ家を出るとき、彼は「何もご馳走できないし、お土産らしいものもないけれど」と、彼の超こだわりのシャンパンを手渡してくれました。  モエの接待は、豪華ですばらしいものでしたが、私には、このジョフロワ家のボトルも、それに匹敵するほど心あたたまる嬉しいものでした。  どちらのシャンパーニュも、世界中の愛好者の支持のもと、ながく、ながく、永-く、発展し続けてくださることを祈りつつ・・・・・   立ち昇る 小さな泡の ひとつぶに 思いを込めし 彼の國の人

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